小さな山里から本物の食を発信する
レストランなのか、食堂なのか。肉屋なのか、お弁当屋なのか。
一見分かりにくい名前のお店ですが、すべてに意味があります。
食堂のように誰もが気軽に、レストランの本物の味を楽しめるように。
肉屋の三代目として素材そのものを何より大切にしながら
本当に美味しいものをおなかいっぱい食べていただけるように。
大きさ、厚み、量、品数
すべてに素材本来の力を最大限引きだすための意味があります。
小さな山里の一風変わったレストランに、ぜひ一度いらしてください。
その一匙で、世界が変わるおどろきと喜びをお届けいたします。
山里レストラン 食堂spoon
奥三河鳳来 肉匠かどや
オーナーシェフ 小笠原 大樹
産地や素材、そして場所。どんな想いで料理を造るのか。
環廻Zine編集部では、どうしても気になっていたレストランがありました。その名は「食堂Spoon」。新城市山吉田の広大な田園風景に馴染み、石垣の上にひっそりと佇む古民家をリノベーションしたそのレストラン。なぜこの立地なのか?なぜ食堂なのか?オーナーシェフである小笠原大樹さんに話を伺ってきました。
肉屋の三代目として生まれて
小笠原
僕は、肉屋の三代目長男として生まれ、小学生のころには既に「いずれこのお店は自分が継ぐんだ。」という自覚がありました。目の前で先代の祖父と二代目の両親がともに肉をさばき、売り、調理をする。今のかどやの看板商品である厚切りとんかつと、素材から仕入れ、調理までするという「自店自消」のスタイルは当時から確立していました。
中学生から夢見た洋食屋さんのシェフ
小笠原
一方で、僕は小さな時からコックさんになりたかった。子どもがプロ野球選手やサッカー選手に憧れるみたいに、コックさんに憧れていたんです。中学生の頃に、とある洋食屋さんで目にした光景。近所のおじいさんとお孫さんが2人でお店に入ってきて、「あーおいしかった。」とお腹いっぱいになって満足そうに帰っていく、そんな光景が僕の心に焼きついていて、いつかこんなお店を自分でもちたい、と夢をもつようになりました。誰もが気軽に立ち寄れて、コック帽をかぶったシェフがつくる本当に美味しい料理を食べられる、そんな洋食屋さんです。
その夢をかなえるために、食肉のスペシャリスト育成学校で食肉に関わるあらゆる専門知識を学んだ後、全国の肉料理専門店やレストランで修業をつんできました。
肉屋を継ぐのになぜ料理の修業を、と周囲の理解はなかなか得られませんでしたが、今ではその経験が確実に活かされている。肉屋の三代目としての自分と、料理人としての自分。どちらもが不可欠で、その両方が今やっと一体になってきたという感覚があります。
素材の力を最大限引きだすための料理
小笠原
素材としての肉の専門知識と、その素材を一番美味しいタイミングと調理法で提供する料理人としての知識。その両方が今の僕にはあります。「一体になる」というのはそういうことなんだと思います。
通常レストランだと先にメニューがあって、そのメニューのために必要な素材を仕入れてくる、というのが一般的な形だと思うのですが、僕の場合はまず肉(素材)が先にあって、この素材を一番美味しく食べてもらうにはどんな調理法が一番合うのか、でメニューが決まる。例えば鶏肉なら、この厚み、この大きさを、ゆっくり時間をかけてソテーするのが一番ジューシーで美味しい、とか、牛肉なら、加工したてより、じっくり熟成させ時間をおいたものの方が味も良く、脂の融点が低くなり体にも負担になりにくいので、お店で熟成させてステーキで提供する、とか。一般の流通ではできないことが、肉屋だからできる。そして、料理人だからこそ、その時一番美味しい旬の素材を一番美味しいかたちで、お客さまの口まで責任をもって届けることができる。肉に限らず、野菜でも果物でも、とにかく旬の食材を一番美味しいかたちで届けたい、知ってもらいたいと思っています。
山吉田との出会い
小笠原
肉屋の自分と料理人の自分。その両方に意味を見いだせたとき、本腰を入れてレストランを開業したいと思うようになりました。修業を終えて地元に戻ってから育ててきたかどや一宮店はテイクアウト専門店なので、レストランほどの規模は難しく、新たな店舗を持つ必要がありました。岡崎や蒲郡などの街を1年半かけて探しましたが、自分が活きる、自分でなければならないと感じる場所にはなかなか出会えませんでした。そんな折、ふとしたきっかけでここ山吉田にたどり着いたのです。奥三河は幼少期から何度も通っていて、山や川の自然に囲まれた大好きな場所でした。そして、この古民家に出会ったときに「そうか、ここか。」と感じたのです。のどかな田園風景に囲まれたまちの片隅にある、石垣の上に建つ古民家。良い意味で、なにもない場所。静かであたたかい、美しい日本の原風景。
ここ山吉田は新東名高速道路の「新城IC」と「浜松いなさIC」のちょうど中間地点。どちらも車で15分程度の距離で、名古屋や東京、大阪からもアクセスがしやすい。そして何より、素材が近い。消費する側ではなく、つくりだす側に近い場所。目の前には田んぼがある。近くのお店には、地元で採れた旬の野菜が並ぶ。素材の魅力を語るのに、こんなに説得力のある場所はありません。ここなら、自分なら、日本に、世界に通用する料理を発信できる。そう確信しました。
ジビエへの挑戦
小笠原
一般的にはあまり知られていませんが、新城、奥三河のジビエは料理人の間では栄養価も高く品質が良いことで知られています。せっかく奥三河に店を構えたならば、ジビエに挑戦したい。
ジビエは臭い、硬い、それでいて高いというイメージもあるかもしれませんが、調理法ひとつで旨味の強い、最高の肉料理にもできます。害獣として駆除されながら、流通が確立していないことから、売値が高い一方で廃棄物として埋め立てられてしまっている個体がほとんどです。骨一本無駄にしない、をポリシーとしてきた肉屋だからこそ、この課題には挑戦のしがいがある。捕えられてから食肉加工、料理、提供までワンストップでこの地でできるようになったら、僕がやる意味がありますよね。
編集後記
素材を大切にする料理人が、新城市山吉田から発信する本物の食。
「こんなに美味しいお店が、こんな小さな山里にもあるんだよ。一度遊びにおいで。」
食堂spoonが、そんな地域の人々の誇りになる日もきっと遠くない。
営業情報
住所 |
〒441-1622 愛知県新城市上吉田松沢42 |
営業時間 | 11:30 – 14:30(ラストオーダー) |
定休日 | 月曜日、火曜日、水曜日 |
注意点 |
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